賃貸料変更の担当者は、引き下げ交渉の困難さを把握しておくことが不可欠です。
大家にとっては、賃貸料引き下げはまだ思わぬ申し入れになりますから、何も考慮していません。
一部の大家は認識していますが、おおかたの大家は経済変化への対応が遅れています。
「守旧派」という言葉がありますが、多くの大家は保守派です。
「こっちが貸してやっているのだ」という思い込みが強く、大家有利の契約書を非常に重要視しています。
「借地借家法」の理解も遅れており、認識していても「契約条件が第一」「法は二の次だ」という考え方 をしている大家もいるというわけです。また、大家もデフレの影響を抱えています。
負債があったり、経営不振など、辛い思いをしている大家もまたたくさんいます。賃貸料の引き下げは、大家の収入減となってしまうため損な話ですので快く受け入れてはくれません。
こういった大家と賃貸料の値下げ交渉をおこなうのですから、お互いのギャップはとても大きいものがあります。担当者が訪問したとたん、「何しに来たんだ」と叫んだ大家もいました。
借主と大家の間には大きな壁かあるということを、しっかり頭に入れておくことが必要です。
原点を忘れてはいけない
困難な仕事だといっても、萎縮しないこと、卑屈にならないことが大事です。「平身低頭」は逆効 果です。
理解を求める姿勢で、冷静で、穏やかに、身構えずに交渉しましょう。段取りの段階で一般的な知識を取り入れていれば、こういう対応が取れるはずです。
そのためにも、担当者は、値下げ業務は「借地借家法」に基づく引き下げ請求であることを、頭に叩き込むことが大切だと考えます。
法で認められた権限であることを頭の中に入れておきましょう。
しかし、交渉段階で法を持ち出す時には、なるべく気を付けましょう。
さきにも述べましたが、囗に出して言い張ると、貸主を硬化させてしまう場合があるのです。
「借地借家法」は引き下げ請求の原点であると、担当者の頭の中に強く刻み付けて、法の意図を承知しておくことで充分でしょう。
こういう原点を勘違いしなければ、卑屈になることもありません。
職務として自信をもって交渉してください。
引き下げの理由はハッキリと
賃貸料値下げの理由をきっぱりと譲歩しないで伝えることも重要です。
「このようなことをいったら、先方の気分を害するかな?」というようなことではいけません。
つまり、遠慮せずに、具体的に説明をする、論理的に話す、明確に言わなければ話が解決しません。
ですから、知識をもっている必要があります。前もって基本的な知識を習得すれば、切り出す勇気は自然に身につきます。
目をつぶって、勇気をしぼり出すことはありません。知識が足りていないと、勇気と元気、訪問回数、情に訴えるだけの交渉になり、満足な結果が出ません。
引き下げ理由をはっきり伝え、意思表示を明確にするためには、「減額依頼書」も大変頼りになります。
繰り返しになりますが、交渉はまず「減額依頼書」から始めます。
口頭での交渉は、会社のケースだと「窓口」までで前に進まなくなってしまいます。
大家には個人だけでなく企業もあります。
上司に借主の「減額依頼書」を見せて、報告する必要があるケースがほとんどなのです。
借主の交渉担当者は、意思表示をした書面を大家の窓口において、「証拠」を残してこないと駄目なのです。
裏付け資料を用意する
引き下げ請求を裏づける「裏付け資料」を準備し提示することも大切です。
大家にとってわかりやすい資料が必要です。
面倒な計算などが入った、理解できない資料は作らないことです。
不動産鑑定士が制作した資料を使うときは、担当者は内容の説明ができるだけの準備が必要不可欠です。
「鑑定士さんが鑑定した資料です」では大家がわかりません。
資料を出すタイミングは、交渉担当者の判断にかかってきます。
「次は○○の資料を持ってきます」というふうに、次の交渉日の約束を取りつける方法として使用するのもいいと考えます。