ドラックストアー

戻らないはずの保証金が返金された

借主の薬局は、開店から6年後に30%の引き下げ請求をし、賃料を126万円に下げようとしたケースです。

引き下げ請求をしている途中で、業績不振に堪え切れなくなりなり、閉店撤退、その後、破たんしてしまった薬局がありました。

敷地650坪、建物は約200坪、賃貸料は月180万円、保証金4000万円、20年契約という物件です。

無理があった出店

引き下げの理由は、①大家は投資回収が終わっている、②店の立地条件が良くないので業績が不振、といったものでした。

間違いなく投資回収は済んでいましたが、貸主は機嫌をそこないました。立地条件が良くないので業績不振というのは、大家の責任とは言えません。

そこの所に店を開店させた借主の問題です。

大家は感情的になり、値下げを拒絶しました。こうして交渉が長引いている間に、借主は破たんしてしまったというものです。

そこで保証金の返金の問題がでてきたのです。

取り交わしでは途中解約をした時は、保証金4000万円のうち3500万円を大家が押収するという約束になっていたんです。

しかし、借主が他のテナントを紹介するなら、保証金は返すという条件もついてました。もっとも、そのテナントは同じ内容でなくてはいけません。

つまり、賃貸料とか保証金とかが同じということなんです。  借主はこういったテナントを紹介することが不可能だったので、3500万円を没収されたのです。

これを不満として、借主は提訴しました。3500万円の没収は、「大家の暴利」だと主張したのです。

裁判の結果は、3500万円の20%に当たる700万円を借主に返金するということで「示談」が成り立ちました。

この示談は、借主を守るという「借地借家法」に基づくものとは違います。

ただ、相互の折合い点を見つけたにすぎません。

ことの引き金が借主のずさんな出店計画にあったからだと私は感じます。

大家は契約条件を見直すべき

さきに述べたように、立地条件の悪さでの業績不振は、その場所を決定した借主の責任ですから、「借地借家法」に基づく借主保護の対象にはならないのです。

現在は、立地を慎重に選定して出店プランを練ることが重要です。

いまは長期不況のまっ最中で、消費が良くなる見込みはまだ期待できません。

「不動産は安くなった」、これを「出店の絶好の機会」と認識すると危ないです。

思いつきの出店が不良資産(不振店)の山を作っている事実にも着目してください。

また、初めの契約条件にも、借主の安易な姿勢を感じられます。大家は預かった4000万円をつぎ込んでいます。

ですが、月180万円(年間賃料2160万円)の賃貸料だと、2年足らずで投資額が回収できます。

大家にとって、こんなにおいしい話はありません。

そういう条件を貸主に提示した借主にも問題があったといわざるを得ません。

こういった高い条件では当然、次のテナントも見つからなかったと考えられます。
古くなった物件を新築当時の条件では誰も借りません。

このような契約条件は、経済成長期、バブル経済時の条件ですから、早いところ改める必要があるのです。

借主の「業績予測」にもミスがありました。

思ったより売れなかったというのは、経営者の予測が甘かった、コケたといえます。

「売上予測は永遠の課題」というわけです。いくらコンピュータなどを使って予測しても、当たるわけがないのが売上予測です。

バブル崩壊後のデフレの渦中で、国内の店舗が業績の「下方修正」をしているところです。

「売上予測」は  当たらないことが証明されました。

それはそれで企業は、いまだに多額の費用をかけて「専門」という言葉に引っ掛かり、調査会社などに「予測」を頼んでいます。

私には無意味に思えます。どうしても頼むときは、5年間ぐらいの予測が必須です。

しかし、「売上予測」「業績予測」は出店に際して必要です。

ですから、経営者本人か出店企業独白が自己責任の範囲で行うべきです。

出店は重要な固定投資であり、つまづくと取りかえしがつかないのです。

調査会社は、失敗の責任を負いません。

保証金は帰ってこないこともある事実を知ろう

また、わが社は賃貸借で出店しているので、固定投資が少ないから、保証金は将来返ってくると安易に考えて出店をすると、このような訴訟沙汰にまで発展してしまうのです。

賃貸借契約では、貸主の投資回収は、賃料収入で常に問題なく進行します。

借主の店が赤字であっても回収は間違いなく進んでいきます。

一方、借主の投資回収は赤字では始まりません。借主の投資回収は、常に不確かなのです。

ですので、そのことも納得して、入念な立地選定、出店計画のもとに店作りをすることが不可欠です。

参考⇒http://hikkosi-mitumori.sakura.ne.jp/sikikinn