新興住宅街

借主の判断基準の誤りが高どまりの要因に

「いくら値下げすることがよいのか」、その判断の基準が借主にないことも要因の1つだと言えます。 

借主の一般的な賃貸料の判断の基準は、大体以下のようなものです。 「この店は業績が一定の経営効率を越えている。

収益を得てている。

プラスになっているから、値下げ請求はせずともいい」「他店よりうちの店は広いから、賃貸料は安い、高くはない」「赤字だから、いまの賃貸料は高すぎる」

個人で借りているの場合、「駅が近いから、この賃貸料はしょうがない」、「まわりの賃貸料が下がったとは聞いたことがない」、こういう判断基準しかないのが実情なのです。

そうじゃなく、判断の基礎的条件は、やはり「賃貸借物件の価格」です。これに対する賃貸料はいくらなのか、その「賃料率」が基になるのです。

判断する基準は額より率で

ひとつの例として、ここに坪100万円の土地があり、それを1坪、年に5万円で借りていたとします。すると賃料率は5%です。

一方、ここに坪50万円の土地があり、それは1坪、年に4万円で借りていたとします。そこの賃料率は8%となります。

すなわち、坪50万円の土地の賃貸料のほうが3%高いという訳です。 

しかし、多くの方は、5万円対4万円という「額」だけを比べて、坪50万円の土地の賃料のほうが安いと簡単に決めてしまいます。

5%の賃料率で計算すれば、坪50万円の賃貸料は2万50 00円になります。あと1万5000円値下げすることが適切だと決めることができます。

これが物件価格に対する賃料率による「判断基準」です。簡単に考えましょう。 この判断基準が欠ける借主が多いのです。

多数の店を賃借しているチェーン店も同じです。判断基準がなければ、引き下げ請求が遅れるのは当たりまえです。 

年に1坪、1万5000円値下げすると、借地面積が300坪のケースでは、年に450万円も節約が可能になります。自分の年収と比べてみてください。 

ついでに、現在は地価がまだ下かっていますから、契約の時より半額の状態であることもあり得ます。

もし100万円の土地の値段が坪25万円の価格に下がっていたら、25万円×5%で、1万2500円か適正賃料という感じです。

すると、実に年間825万円のコスト軽減なのです。 

こういったふうに、賃貸料の「額」ではなく賃貸借物件価格に対する「率」を判断基準にし、そのパーセンテージを継続していくと、いかなる経済変動にも対応でき、適正賃料をはっきりと決断するのができるのです。

もちろん、「賃貸借物件の価格」に対する「賃料率」は貸主にも大事です。

「投資効率」の問題だからです。

物件を貸して(投資)、そこから稼ぎ出す仕事だからです。 

募集賃料で判断してはいけない

 

「募集賃料」は交渉の契機にはなるでしょうが、適正賃料の判断基準にはならないというのをお話したいと思います。

公示される募集賃料の額と、「成約賃料」の額にはひらきがあります。

いかなることなのかというと、実際の契約がどう決定されるのか、その実態は見にくいということです。

例として、「フリーレント制」といって、「1年間は賃貸料をタダにするけれど、2年目からは募集しているとおりの賃貸料を払ってください」という例もあるのです。 

さらに、その他の契約条件もさまざまで、「礼金・敷金はいらないからこの家賃で」とか、「保証金を引き下げるからこの家賃で」という交渉も頻繁にやっているのです。 

都内の新築ビルでは、現在テナント確保の競争が盛んになっています。

ですから、新築ビルの成約賃料は表向きの募集賃貸料に比べて低い傾向にあります。

比べて古いビルでは、従来の「高止まり」の賃料が継続しているので、新たに同一ビルに入居するテナント(借主)の賃貸料は、以前からの入居者より安いという逆転現象も生じているのです。

「募集賃料」はとにかく、値下げ交渉の契機とするだけにして、値下げの額の目安にはしないようにするほうがいいでしょう。

特に企業は、貸主の都合に踊らされることなく、先に述べた「賃貸借物件の価格」などから目標額を決める方がいいでしょう。 

大家惻も、「賃料の逆転」という現在の状態に対応が迫られています。

遠からず、今までの借主が「後からの入居者のほうが安い」と必ず気づきます。

借主を確保し空室を作らないためにも、今までの入居者に貸主の誠実な対応が必要になります。

新たにテナントを募集するときは、継続している貸主の賃貸料も値下げしたほうが無難でしょう。 

「募集賃料」は、近隣の不動産賃貸借の「相場」にもつながってくるのです。