「信託銀行」が、地主と土地信託取り交わしをし、運動施設を建設し、ジム施設経営会社と賃貸借の取引していた物件例です。
貸主は「信託銀行」で、借主は運動施設を経営管理するA社です。
土地の持ち主は信託銀行に土地の運用を依託し、賃貸料から利益の分配を得るという形態です。
持ち主と借主は直接の結びつきはありません。
土地の面積は870坪、建造物は2階建てで650坪になります。
貸主が経営破綻してしまったケース
貸主(信託銀行)の建設投資額は6億円、A社が預託した保証金は5億5000万円、最初の賃貸料は毎月650万円でした。
契約を結んだのは1991年で、20年間の取り交わしです。
しかし、バブル崩壊した後の不況において運動施設のA社は経営状態が悪化したため、10年目の2001年に賃貸料引き下げを請求、10%値を下げることに成功しました。
毎月585万円に下がったのです。
しかしながら会社の経営状態がよくならないので、2004年に2回目の引き下げ請求を行いまいした。
ですが、非常に大きいなハードルがありました。
貸主である「信託銀行」が経営破綻して、国から「公的資金」を受けるはめになっていました。
こういった貸主から、賃貸料を下げてもらうことは難しいと、A社は悩みました。
そこで、賃貸料の担当者が相談に訪ねて来たわけです。
まず結果をいうと、賃貸料の担当者は毎月55万円の値下げを実現しました。
9・4%減の、毎月530万円の賃貸料にしたのです。
その他のも、貸主に預けてある保証金、5億5000万円を「分割返還」してもらえるように取り交わし条件の一部修正も達成ました。
毎月100万円ずつ返金してもらい、そこは賃貸料と相殺することになりました。その結果、A社は貸主に毎月430万円の支払うことになりました。
値下げ分と保証金の戻しの分をトータルすると、毎月155万円の「支出減」です。
これまでの賃貸料換算では、26.5%の支出を減らす結果になったのです。
実質倒産し、立て直しの計画を始めたばかりの企業からこれほどの成果が出たのは着目したいところです。
この担当者はどういった駆け引きをしたのでしょう。
不動産のプロとの駆け引き
はじめに、担当の方と貸主への「訪問する回数」より、引き下げの申し出に不可欠な裏づけ資料を取りまとめたうえで「理詰めの交渉」開始することにしました。
先方は銀行で、まさに不動産のプロフェショナルです。
加えて大きな団体で動いていますので、口頭で交渉や情をアピールしても解決しません。
こういった貸主に同感してもらうには、根拠のある、論理的な駆け引きにすることが必要です。
そのことを最初の方針にしました。担当の方ははじめに「登記所」に行って、貸主の「信託原簿」を目を通しました。
信託原簿とは、貸主(信託銀行)と土地の持ち主で取り交わし「信託契約書」の元になるものです。
詳しい金額などは明記されてませんが、だいたいの取り交わし条件は解ります。
「信託原簿」は開示が義務化されていますから、だれもが確かめることが可能です。
信託原簿には、契約期間の20年間は土地の名義人は貸主となっていました。
すなわち、土地をどのように使用するかは貸主の自由であるということです。
いざというとき、貸主は土地を売り払うのも転貸を行うのも可能なのです。
すなわち、何もかもを委ねられて、全部自由という状態になっているのです。
地主は貸主に委任しているわけです。
信託銀行は、国が保証している事業体なので、信用力があるのは当たり前です。
そうなれば、値下げの取引相手は貸主(信託銀行)のみです。貸主にわかってらえれば、地主も了解してもらえるであると確認し、そのことを二番目の方針にしたのです。
ところが、地主は賃貸料からかなりの収入を分配されていますので、賃貸料引き下げは当たり前ですが地主にも影響があります。
地主の承諾がなければ値下げは計画どおりに進まないということもあるのです。
ですが、その交渉に関しては、こちらの手が及ばないところですので、貸主に委託することにしました。
信託銀行も、土地の持ち主との関係にあたっては借主の立場です。
信託契約の条件駆け引きも、当たり前ですがおこなっていかなければならないのです。
貸主の信託銀行は、2回目の引き下げ申し出に困惑し、難色を示してくるのも考えられます。
そういう理由からも、この値下げ交渉はA社において実に難しい内容になることが想定されました。
貸主は「公的資金」により、現在「再建計画」を進行中の企業なのです。
一般的に考えても賃貸料の大きな値下げは、貸主サイドの損益計画を左右しますから、困難という決断もあります。
ですから、交渉過程において賃料の値下げ幅は、当初の185万円を抑えて55万円にすることも想定して、あとは月間100万円の「保証金の返還」ということに目を向ける方針も用意しました。
月々の返還分を賃料と相殺すれば、借主の「支出額」が大幅に減ります。
すなわち、借主(運動施設サイド)は損益の改善より毎月の支出を削減する資金繰りに重視することにしたわけです。