山積みの書類

引き下げ請求額の算出方法

では、賃貸料をどれほど軽減させてもらうか、その請求額を割り出す作業に入ります。

これは、「借地借家法」の減額請求の意図に基づく出し方です。 

現在は、賃貸借物件の値段は低下しています。また、景気も非常に変わっていて、借主の返済能力も低下しています。

正しい賃貸料をはじき出すには、以下の2つの方法があります。

賃貸借物件価格から

賃貸料算出のポイントは、賃貸借物件の値段です。

借りるのは「100万円の物件か、50万円の物件か」ということです。その物件の値段がアップすれば、賃貸料は増額請求、逆に低下すれば、減額請求ができます。

ある会社のケースをあげて、計算方法を説明します。

大家の年間賃貸料収入は、10年前から変わらず600万円です。

しかし、賃貸借物件の値段は2億円から1億円に下がっています。大家の資産効率は、10年前は3%(600万円÷2億円=O.03)でし たが、現在は6%にアップしています。 当初は、
2億円の物件を600万円で借りていました。これは大家と借主が納得した賃貸料でした。

現在では、物件の値段が半額の1億円に下がりました。ですが、賃貸料はこれまでどおり600万円です。これは適正な賃貸料ではありません。理論的には、半額の300万円が適正な賃貸料になります。

しかし、大家サイドにはいきなり半額というわけにはいかない理由があるのがほとんどです。

大家が求めている収入と「資産効率」を踏まえたうえで、300万円から600万円の間で引き下げ交渉を実行すればいいでしょう。 

土地だけ借りる「借地」の時には、建物等の値段をはずして同じく計算します。 なお、貸主の「投資回収率」も計算しておきましょう。

建物等に投資した価格は5000万円ですから、 6OO万円÷5000万円=O.12 で、年に12%回収してきたことになります。

すると、8年あまりで投資額の回収は済んでいたことになります。大家は8年を過ぎると「身軽」になっていますから、値下げ交渉がしやすくなります。

経済事情の変動から 

今度は、この会社(借主)の経済事情、つまり業績の移り変わりから適正賃料を求めます。

このようなケースでは、賃料算出の基礎的要件は「売上総利益(粗利益)」です。勿論、売上総利益はインフレ、デフレに影響されます。

賃貸料もそれにともなって増減することが当たり前なのです。

当初の売上総利益に対する賃料率は、 600万円÷4000万円=0.1で、15%でありました。

現在は、売上総利益が3200万円に減少しましたから、賃料率は18.8%に上がりました。

賃貸料が引き下げされないため、他の経費にしわ寄せされる状況なのです。 

しわ寄せとは、他の経費が削減されたということです。

他の経費が3200万円から2600万円に600万円も減少しましたから、人件費が減らされたことも考えられます。

それか営業費が削られたのでしょうか。
賃貸料をそのまま放ったらかしにしておくと、他の経費をカットすることになり、業績は、悪化の一途をたどります。逆に賃貸料を削減し有効活用すると、業績は上昇します。

この差は大きいということを頭に入れてください。 
それでは、現在の売上総利益に対する適正賃料を求めてみます。当初の契約で貸主と借主が合意した賃料で、それを率に直すと15%の賃料率になります。    

3200万円×15%=480万円で、適正賃料は年に480万円ということになります。

先の「資産効率」の計算では、300万円から600万円の問という結果がでました。 

しかし、これも計算上の賃料ですから、貸主の事情も考慮しながら480万円から600万円の範囲で交渉して決めることになります。

ただ、借主は最初の賃料率を15%と決め、これを「経営指標」にしたわけですから、15%を重視して守り続ける姿勢が必要です。

経営指標を忘れないことです。 

ちなみに、売上総利益とは「売上高」から「売上原価」を引いたものです。

賃料を含めた経費は売上総利益から出費することになります。

つまり、賃料、人件費、広告費、その他の経費が売上総利益から引かれ、その残りが「営業利益」になります。