ビルのテナント

自動増額特約と賃料保証特約の最高裁判例

これまで「借地借家法」に関してお伝えしてきましたが、借主はそういった法律に守られていることを理解して賃料引き下げの交渉に取り組んでください。

ですが、「借地借家法」を旗印にして、貸主惻を攻めて行けというわけではありません。

「法律でこのように決まっているので、引き下げを認めろ」という出方だと、先方は態度を硬化させます。

「借地借家法」はどこまでも情報として取りこんでおき、交渉では明確に説明し、理解を求める態度で挑むとよいでしょう。

法を盾にやり合うのはやめましょう。 

今回は自動増額特約と賃料保証特約に関わる最高裁判例です。

自動増額特約は相当か?

国内有数の企業が、地主に234億円の建設費(名目は敷金)を預託して、ビルを建築させました。

対象のビルは地主の所有ですが、企業は年間18億円の賃貸料で対象のピルを借り入れることになりました。

契約書は、2年ごとに賃貸料を8%自動的に引き上げるといった「自動増額特約」も記載されてました。 

企業はそのビルにテナントを入れて、その賃貸料から地主(貸主)に賃貸料を支払います。

すなわち「転貸」です。この契約は「サブリース契約」といいます。

今回は企業が「サブリース業者」になります。 

サブリース業者惻は契約する時に、「何かあったとしても賃貸料は約束する。

リスクはこっちサイド(借主)が取る」と口頭で約束したのです。

ですが、不景気のためにテナントが思いのほか入らず、サブリース業者サイドは苦境になり、貸主に賃貸料の引き下げをお願いしました。

貸主はこれを不服として、裁判になったのです。 

この場合も、最高裁は借主の減額請求権を承認して高裁に差し戻しました。

「借地借家法の減額請求の適用は取り去れない」、よって増額特約に拘束されないという決断をしました。 

賃貸料の引き下げはいまだに交渉中ですが、最高裁は「相当の賃貸料を見極めるときには、借主が多額の資本投下をしているのを考えるべき」という捉え方を指し示しています。 

対象のビルは1995年に借主に引き渡されたのですが、約1年半後には「賃料減額請求」が始まったのです。

サブリース業者サイドに予想の甘さがあったのは否定できません。
しかし、バブル崩壊後の構造的経済変化のもとでは、「借地借家法」で決まっている賃貸料の引き下げ請求は認められるというケースです。

賃料保証特約が記載されていた例では

もう1件、サブリース契約の際の判例をお教えします。 

上記のサブリース業者は、口頭で「賃貸料は約束する」と言っていましたが、契約書に「賃料保証特約」が記載されているケースだとどうなるのでしょう。 

とあるサブリース業者が、1995年に貸主とサブリース契約をしました。

月に1064万円の賃貸料で、10年間は該当の賃貸料を約束するという「賃料保証特約」が条件を付帯されてました。 

しかしテナントが入らず、取り交わしからわずか7ヵ月後に、借主は引き下げ請求を請求しました。

そうして、次の月から保証賃料以下の賃貸料を支払うという事態になったのです。 

この状況でも、最高裁は借主の訴えを認め、「賃料保証特約」は有効ではないと判断をしました。

「借地借家法に基づく引き下げ請求はできる」という例です。 

「賃料保証特約」が無視されたわけではありません。

最高裁は、「相当の賃貸料を見定める時には、特約の存在や賃貸料を決めるまでの状況をよく考えて……」という捉え方も示しています。 

これらの2件のサブリース業者のケースでの判例で学びたいことは、「自動増額特約」や「賃料保証特約」が契約の条件にあった場合でも、「借地借家法」の引き下げ請求を認めているということであります。

引き下げ請求はあり得るのです。