貸主だけに限らず裁判所や弁護士も、家賃指数を発言することがよくあります。
ただ、家賃は高止まりの状態ので書かれてますし、景気の著しい変化が家賃指数へは反映されていないのです。
引き下げの交渉をする時は、このことも覚えておいてください。
今回は大型商業施設の敷地内にある土地の地代増額特約をめぐっての裁判例と地代をめぐる裁判例を紹介したいと思います。
増額特約は有効か無効か
該当の土地は526.mで、地代は1ヶ月800万円です。
約150坪の土地の賃料としてはかなり高めですが、大型商業施設内の重要な場所を占めているということのようです。
17年間惜りており、契約した時の賃貸料は1ヶ月633万円となっていましたが、1回目の更新時に15%の値上げ、2回目以後については3年ごとに10%の賃貸料値上げという「増額特約」が契約書に表記されて
いました。
結果、現在では800万円になったわけです。
借主は賃貸料引き下げの請求を行いましたが、交渉がこじれて訴訟になったのです。
そうして高裁で「増額特約は有効」という貸主に有利な判決がでました。借主は、引き下げどころか特約にのっとって10%上乗せの880万円を支払えという判決です。
借主は、最高裁に上告して判断を任せることにしたわけです。
そうして、最高裁は借主の意見を認め、「減額請求は可能」と判断し、高裁に差し戻しました。これは注目すべき判例です。
今の経済状態下では、「増額特約」に縛られないといった判断というわけです。
最初の賃貸借契約は、土地の価格が上がることを意識したものでした。
だから、3年ごとの「増額特約」が成り立ったのです。
しかし地価は大きく下がってしまったのです。 対象の敷地の地価は、1986年には1㎡=345万円でした。
それが‥11年後の1997年には、1㎡=126万円と半額以下に下がっていました。きっと2003年当時は一層下がっていたでしょう。
そこで最高裁は、「地価が下がったことで、特約の基礎事情が消失した。増額特約による賃貸料決定は不相当」と決断したのです。バブル崩壊後初めての、重要な最高裁の判断でした。
それから、借主と貸主は示談して、賃貸料は800万円から785万円に減りました。額は少ないですが、「増額特約」が不相当という判断がでたこと、これが大切なことです。
特約を二重にしたケース
貸主の中には慎重を期する人もいるようで、契約書に「増額特約」と「不減額特約」を記載した事例でした。
借主に向け、「一定期間ごとに地代を値上げをします」と、「値下げ請求はさせない」といった二重の確約をさせました。
すなわち、「特約」では、「地代は消費者物価指数の上昇に合わせてアップさせる(増額特約)。指数が下降しても減額しない(不減額特約)」といったことが記されていたわけです。
しかしながら不景気に伴う借主の業績不振は避けられません。借主はしかたなく地代の引き下げ請求をしてみました。
貸主はこれに異を唱えて裁判になったのです。
裁判は、一審の地裁では「借地借家法」を適用して借主の引き下げ請求を認めたのです。
しかし二審の高裁では、「適正な賃貸料が変わっていない」ということで貸主勝訴の判断となりました。
その後最高裁では、やはり「借地借家法」が適用されて、「特約があっても賃貸料引き下げの請求は妨げられない」といった判断がでて、高裁に差し戻されたのです。
その土地の価格は、契約した時から7年後には4分の1に下がってました。
勝訴した借主は相当の値引きができるはずですが、契約した際にいろいろと事情があったそうです。
最高裁は、「特約となった事情をきちんと前提に、賃貸料を決めるべき」といった意見も示しています。
こちらの状況で大切なことは、貸主惻の増額の目安に「消費者物価指数」が利用されていることです。
不動産業者は消費者物価指数を値下げを断る理由に使うことがあります。貸主が消費者物価指数を使用することは多いと言えます。
土地が暴落しても「地価」が反映されない消費者物価の家賃指数というものは、賃貸料引き下げ請求をするにあたって合理性に欠けます。
そこから「適正賃料」を算出するのは不可能なのです。