「高止まり」になる原因には、借主サイドが賃貸料引き下げの目的とその効果をさほど計算していないことなどもあります。
目的と効果を把握していないから、意欲的になれないのです。
交渉の時点で、おおかたの企業が「経済状況が悪い」「収入が減った」というわけで、値下げの申込みをしています。
ですが、これのみではぼんやりとした値下げの理由でしかありません。
というわけで、貸主サイドが「こちらだって一緒で大変ですよ」と切り返されるとと、引き下がるしかなくなります。こういったケースもまた結構見られます。
値下げの目的は何であるのか、その効果は何になるのかというのを、具体的に理論づけてしっかりと頭に叩き入れておくことが大切です。
目的と効果を踏まえていないあやふやな取り組みでは、効果は上がらず賃貸料の高止まりの状況は無くなりません。
ツライ状態は乗り越えられないのです。
目的とは、値下げの狙いは何か、なぜ引き下げ請求をするのかということなのです。
そして効果とは、それによりストレートに現状がどう変化するかを考えることです。
そして間接的にも、すなわち隠れた部分でも、どんな効果が上がるかを考えることです。
目的と効果を考えよう
目 的
・適正賃貸料へ改める。いまは高止まりの状況。
・会社のパワーアップと個人のライフプラン強化のため。
・会社の危機意識の共有化。過酷な経済状況をやり過ごすため。個人の生活も同じ。
・機会損失の阻止。いまが賃貸料値下げの良い機会。タイミングを見逃すと大損害になる。
・契約条件の改正。経済状況の変化に応じていくため。
間接的な効果
・意識の改革・賃貸料増減改変は、重要な通常の職務であることが認識される。賃貸借契約と賃料改定業務は不可分の関係にある。
・戦法の蓄積・賃貸料改変業務は今後も続く。「人材の育成」「人的資産」が育まれる。
・従業員の確保、賃貸料値下げ分を賃金や募集人数などに充てれば、人材確保の原資になる。
・慎重な出店計画。賃貸料を落としても、業績の回復が見込めない店がある。立地に問題はないか。以後は立地見極めに気を付ける。立地選定の過ちと引き下げの請求は密な関係にあることもわかる。
直接的な効果
・経費の削減による損益の改善。支出の減少による資金繰りの改善。利益を増やすことは大事であるが、また企業を存続させるにはまず資金繰りが大切。
新店舗開発を失敗したケース
上記が一般的に考えられている賃貸料の引き下げ目的と効果です。
最後の「慎重な出店計画」につきまして、次にあげるようなケースもありました。
ある一部大手企業が、1年のうちに50店をオープンするという方針のもとに出店を実現したのです。
その組織力はかなりのものですが、新店舗開発に力を入れすぎて、従来の店が業績不振になりました。
今では不動産の値段が昔に比べずいぶんと安くなり、出店の規制も軽くなり店を増やしやすい状況が整っています。
これについては、他の会社も同じなのです。
一方で、構造的不況と消費不況がストップしない現在では、新店舗を開店しても儲けることができない世の中になっていると言えます。
新店舗はすぐに利益貢献はできませんから、既存店の不振と合わせて、この企業は当分浮上しないでしよう。
現在は、企業戦略の再構築と企業体質の強化を優先すべきときなのです。