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現在の賃貸料はなぜ高止まりしているのか?

前回お話したケースでは契約書のことには触れなかったのですが、大家さんの見解の判断基準には「賃貸借契約書」の約束が存在します。

取り交わし内容は3年経過のたびに増額改定条件があったのです。

まして、賃貸料引き下げのについては約束していないという言い分です。

賃貸料が高止まりすることになった原因には、この「契約書」の問題も存在しているのです。

契約書は変更や解除をすることができる

大家は取り交わしを守れと主張して、借主は契約書にがんじがらめにされてしまいますから、賃貸料値下げ交渉は進まないということです。 

書面での取り交わしで判を押し決めたので、賃貸料値下げは不可能だとだれもが想定することです。

ですが、不 動産の賃貸借契約は長い間続く契約が一般的です。契約期間中には、取り交わし締結時の土台となる条件が変わってしまうこともあり得ます。

土地の価格が上がったり下がったり、経済情勢が回復したり悪化したりします。 

そうであっても約束なのでと、賃貸借条件をそのままにしておくと、法の世界でいう「衡平の原則」に沿わないことになります。

一方が高利回りの利益をあげ、もう一方が苦境に追い込まれる状況だと、アンフェアで適切でないビジネスとなってします。こういった取引関係は「衡平」じゃないと考えます。 

事情変更の原則とは

という訳で、契約の内容を作り変える必要性がでてきます。賃貸料の引き下げのみでなく、これ以外の契約条件の変更や解約を要求することができます。

このことを法律用語で「事情変更の原則」といいます。 

「事情変更の原則」は民法ではっきりと決められてはいませんが、民法の一般的な基本として不動産に関する法の分野では広く認められています。

これから裁判所の判例を紹介しますが、裁判官もはっきりと認知している原則です。 

さきにもお伝えしましたが、国内経済は1991年以降、不動産価格が大きく悪くなりました。

国内の地価がピークのときは2500兆円にものぼりました。

これについてはアメリカの約2倍です。

しかし、バブル崩壊後は急落し、国内の地価は1300兆円に大幅に減りました。 

さらに、経済環境の構造的変化で不景気と混乱は現在まで続いています。

「債権の放棄」や「個人破産の増大」などは、だれでもわかっている「公知の事実」と言えるでしょう。 

「平成の不況」を取り交わし変更で乗り切らないと、企業も個人も生き長らえることができません。

「そごう」「ダイエー」「マイカル」「ミサワホーム」「大京」といったケースでお気付きの通り、債権放棄をしてもらったり「民事再生法」の申請をしました。

「借りた金を負けてもらえ」が生き残りの条件です。 

一流企業さえも、リセットしなければ再建が困難なご時世なのです。

増額特約が壁になる

ほとんどすべての賃貸借契約書には、大家が得する「増額特約」が見受けられます。

増額特約とは、ひとつの例として、3年後の賃貸料改正の時には1割の賃貸料値上げをやりますよという感じの約束のことです。

この特約が賃貸料値下げの壁になっているケースがかなりあります。

この特約が有効か否かに関しての訴訟が、近頃では多くなってきました。

この判断は難しく、「高裁」では増額特約を承認する判決がでたこともありました。

しかしながら、その後「最高裁判所」で「増額特約は不相当」と判断され、高裁に差し戻されました。

この判例は、別に紹介しますので、ぜひご覧ください。

「最高裁判所」で「増額特約は不相当」と判断されたことは非常に重要な点です。

「高裁」の法律判断の間違いを正したのです。

このことを借主と貸主のお互いが把握しておけば、値下げ交渉はさらに無理なく運びますので、意識しておいてください。