ドイツのアパート

賃下げ交渉の壁は大家だけではなかった

その店は、土地1400坪と500坪の建物で、賃貸料は毎月500万円です。 

大家はその他にも多数土地を持っている地主で、会社も経営しています。

その店は、12年間借りていて、その間、土地は過激な値下がりし資産の価値がダウンしています。

大家の投資回収は済んでいて、大家としての儲けもしっかり得ている状況ですので、賃貸料引き下げは容易と考えていました。 

しかし、話し合いは手詰まりとなりました。大家さんは話しを聞いてくれないのです。

調停をすることを認めてもらえたが・・・

担当者は、行っても会うことすらできません。

資料などを渡そうとしても、「そんなのは知らん」と手にしてくれません。 

オープンのとき、こっちには面倒をかけないといったでしょう。

「これまで賃上げをしないできたのに、値下げの話をするなら店を閉めて出て行ってほしい」 「そんな店とは付き合わない」 賃貸料の値下げと耳にしただけで、冷静でなくなるの人だったのです。 

賃貸借は、両者が権利を認めなければ良い関係は築けません。

今ではおおかたの大家は環境の変移を感じて、対話の姿勢があります。今回のような人はあまりいないでしょう。 

とはいえ、値下げの交渉を行わないことはできません。

長い間不景気で苦しい状態の店としては、実行しないといけない勤務なのです。 

賃貸料の引き下げ請求は法的に認められています。これまで話を聞こうとしない大家さんだったんですが、「調停と訴訟」で結論を得ることに「合意」してくれたんです。

結局は担当者の執念に負けた状態で、「それがいいだろう」とわかってくれたのです。

また「調停はそっちから申し立てすること」、大家が経費を負担するなら行わない、と話しをしてくれました。 

調停はあくまでも「協議」の場であり、調停委員に適正なものを助言してもらい、協議で決めることです。

調停で決断できないときは、「訴訟」というわけですが、それもけんかをする場ではありません。裁判所に「適正な賃貸料を判断してもらう」ということなんです。

担当者の上司にこれまでの過程を報告し、調停に持っていくように発案したところ、上司は、「調停・訴訟はみっともないので反対。話し合いでまとめるように」と行ったのです。 

大家は高齢だし、店がある地域では有名なのでといったことも理由にあげました。

しかし、社長には届かず、値下げ交渉はまたも壁にぶつかってしまいました。担当者は3年前と今回、2回も苦杯をなめたのです。 

これはひとつの極端な件でしたが、「家賃の高止まり」が起こる原因の多くを含有している例です。

なぜ家賃が高止まりしてしまっているのか

①大家も借主サイドの上司」も、「借地借家法」がわかっていない。

②両者が賃貸料の基本を理解していない。
不動産価格の上昇、下落と景気事情の変化によって賃貸料 も増減することを知らない。

③大家は「貸してやっている」という気持ちが強く、上司は「世話になっている」という気持ちが強い。
すなわち、ビジネスだという考えがない。

④ 上司に、この不況を乗り切るといった責任感やモチベーションがない。 

「借地借家法」については、後ほど述べます。

ここでは借主サイドの上司にスポットを当ててましょう。 

その上司は、店と取引がある銀行からの出向者だったのです。

定年も近いようで、後は何事もなく退くことを望んでいるような上司でした。

こういった人には「調停・訴訟」は面倒なことであり、回避したい気持ちになりがちです。 

責任問題になるかもしれないと、護身の意識も働きます。

賃貸料の調停などは責任とかの問題ではないのですが、把握していない人は「とんでもないことになった」と思い違いをします。

「もしも負けたなら退職ってこことになるかもしれない。そうなると大きな責任問題になる」と思ってしまいます。

ですが、そういうことにはなりません。

賃貸料の引き下げ請求は法で認められていますので、心配することはないのです。 

いうまでもなく、この上司には、不況を乗り切ろうというと志、業務執行能力が無いのです。

部下に指示を与え、働きやすい環境を整える、フォローするのが本来 の上司なのです。 

大きな利益となる賃貸料値下げ交渉

値下げ交渉をする際には、担当者が思いっ切り仕事ができるように、会社内にそのベースを作っておくことが大切です。

つまり、担当者の意見に着目し、自らも賃貸料値下げ業務の何たるかを把握し、交渉の「調整」や「方針」などを事前に決めておくことが必要です。 

もし、大家が絶対に値下げに応じないならば、どこで調停・訴訟に移すか定めておく必要もあります。これは方針を企業決定しておくことです。

その決断ができていれば、スムーズに裁判所に持ち込むのもできるのです。残念にも、この上司にはこれらのことが欠落していたようです。 

全国に店を持つ会社なのに、賃貸料改定担当が1人しかいないという実態を見ても、おかしいと思います。

この店の引き下げ請求率は15%でした。

もし大家がこれを認めた場合は、そこの店舗の経費削減額は年間900万円です。 

店によって賃貸料は違いますが、単純に15%の減額率を100店舗に掛けると、年間9億円の経費削減になります。

真剣に賃貸料値下げ交渉に着手するべきだと勧める理由はここにです。 

賃貸料を高止まりのまま何もせず放っておくと、会社の損失だけではすみません。

株主に対し損害を与える背任行為にもなるのです。