不動産賃貸業の貸主は、ビルなど不動産にいったん投資すれば、後は安定した賃貸料が入るので、投資回収も問題なく、収益も上がるものだと思っている人がほとんどです。
ですが、それはすでに過去のものです。
この頃では、大家の投資回収は筋書きどおりに進まない時代になってきたのです。
かつては、不動産は次から次へと値上がりして含み益も増え、所有価値も上がりました。賃貸料収入以外でも収入が得られたのです。
でもいまは値崩れして、所有資産は減損し続けています。
本来の賃貸業としての賃貸料収入がすべてとなったのです。
大家が借主を選ぶ時代ではたくなった
戦後から1991年(平成3年)までの45年間は、大家に得な契約条件どおりの賃貸借が続いてきました。
しかし今では、経済事情が著しく変化し、借主から家賃を下げてくれとか、保証金を返してくれとか、質権を設定などを求められる時代になりました。
これは、バブル崩壊後、すべてが根底から壊れたということなのです。
土地は価格がアップするものという「土地神話」と、不動産賃貸業は変動しない、儲かるものという「不動産賃貸業神話」も崩れ始 めました。
とにかく、このことをしっかり頭に入れて、過去の慣習、思い込みの延長を断ち切らなければいけないのです。
会社も店舗もマンションも、土地が安くなったため供給は続きます。
ただ待っているだけでは、空室が増えてしまいます。
そのようなご時勢になったということを、しっかり理解するべきです。
大家が借主に選ばれるご時勢になったのです。
経費削減のを考えることの重要性
これまでの不動産賃貸業は、安定した収入があることが当たり前としたコスト体質になっていたため、これを改善することが不可欠です。
コスト削減が遅れているので、いますぐ再構築する必要があります。
バブル崩壊後の十数年、賃貸料だけは高止まりしてきたので、コストを削減するいう意識がないのです。
けれども、この先は人件費や外部流出経費の削減を考える必要があります。
大家も、そこまで考える必要がでてきたのです。
この先は、もっと「賃貸料を下げてくれ」と借主から要求されるご時勢になります。
その賃貸料引き下げ請求に対応できる力を備えておくことが不可欠です。
賃貸料が高止まりのままだと、テナントが出てしまいます。
すると、次のテナント募集の際は値下げする以外に方法がなくなり、他のテナントの賃貸料も値下げしなければ、信義誠実の原則に反することになってしまいます。
経済状況の変化で賃貸料は下がっています。この先も当分は、賃貸料が上がることはないと気付くべきです。
当初の賃貸料は継続しないと考えて、賃貸料は年々下がることに応じられる力をつけることが必須となります。
今の不動産賃貸業のコスト体質は、「役所」と同じようなものです。役所は、税収入が少なくなっているにもかかわらず、支出を抑えることをしません。
不動産賃貸業も同じです。
もっと不安感を持って、厳しいコスト削減を実施しないと、ジリ貧・破綻状態に追い込まれる恐れが生じます。
経済状況に合わせた契約条件に変更
当初の契約条件は長続きしないということも自覚するべきです。これからは、経済環境に応じた「条件変更」が必要になってきます。
「取り交わしたときはこうだったから、このとおりにしてくれ」という大家の意見は、もう通用しません。
大家と借主が両者ともに生き延びるためには、譲歩し合って契約条件を変えなくてはいけません。
「増額特約」も確実ではなくなりました。いままでの契約条件の中には、ほとんど「増額特約」があり、それが有効にでした。
ですが今では、拘束力がないと法的にも判断されました。「特約」の存在は認めても、今の経済状況では「引き下げが相当である」という最高裁の判断がいくつもでています。
こういった状況を受け流すわけにはいかなくなりました。
大家が有利となっている契約条件を変更する準備、借主と対等の賃貸借契約に変更する必要があることを把握することが大切です。