更新の期間

賃貸料の見直しポイント~質権・更新料と期間~

土地のみの賃貸借、「事業用定期借地契約」で約1200坪の土地を借りた、会社がありました。 

地代は毎月120万円、保証金は1億円、契約の期間は20年です。

その当時の地価は坪40万円だったんですが、最近では坪15万円ほどに落ちています。 

この会社は、どのような方法で引き下げを成功させたのでしょうか。

賃貸料の引き下げと保証金の返金

借主は引き下げ交渉をして、20万円の引き下げを成功させました。

また、保証金の分割返還もしてもらうことにもなったのです。

月に30万円ずつの返還で、年間360万円が返ってくることになりました。 

さらにI社は、保証金に「質権」を設定する承諾も取り付けました。

「質権設定承諾書」は、借主が預託している1億円の「保証金返還請求権」を「債権質(担保)」として利用してもいいですよ、との了解ごとと考えてください。

今回の案件では、分割返還で契約満了までに約3000万円ほど戻ってくることになっていますが、まだ7000万円以上が保証金としてそのままです。

そこで、7000万円の質権設定承諾を依頼し、貸主はこれを同意しました。大家にとって、「質権設定」は特にマイナスにならないからです。 

借主にとって質権設定は、保証金を保全するだけでなく、銀行などから貸付を受けたい時に活用できます。

資金を必要とした時に、「7000万円の質物(担保)がありますが、どれくらい貸付してもらえますか」と持ち込めるわけです。

なぜ今回これほど良い条件を3つも獲得できたのか、その成功の重要ポイントを次にあげます。

①初めからの契約条件が、大家にとって好条件だった。大家は十数年の間に高収益を出していた。

②地価の変動資料(県の公示価格)が説得材料となった。十数年の間に地価は3分の1近くまで下落していることを大家が理解した。

③賃貸料を100万円に引き下げても、大家の資産効率(地代率)は6・67%と高かった。これも大家は理解した。

④大家は、質権設定承諾の悪い点がないことを理解した。

質権の仕組み

 
もし銀行に融資を依頼しに行った場合、「質権」はいかなる効果を現すか、その流れを述べます。

保証金1億円を大家に差し入れたので、同社は保証金の「返還請求権」を有します。

そこで、大家から保証金7000万円に対する質権設定の「承諾書」をもらいます。 

その「承諾書」に従い、銀行との間で「質権設定契約」を取り交わします。「質権者」は銀行で、借主は「質権設定者」です。 

更に銀行は、借主の保証金返還請求権(債権質)を担保として、借主に貸付けをします。その担保評価は7000万円の30%から70%となると考えられます。

すなわち、2100万円から4900万円の間の融資を受けることができるのです。 

もし会社が倒産して賃貸料未払いなどの債権が発生した時は、大家は保証金1億円から、借主に対する債権を差し引いて、残りを倒産した会社に返します。 

そのとき銀行は、戻ってきた保証金の中から、他の債権者よりも優先的に貸付けの清算ができます。

これが「質権」の仕組みです。 

質権を設定する時には、預託金の全額を設定対象にすると、大家は心理的に抵抗感を持ちます。

普通に考えて預託金は高額ですから、一部に設定するだけでも銀行からの資金調達がしやすくなります。

もちろん、預託金を守ることにもなるというわけです。

更新料と期間の変更

更新料と更新期間を再検討することも、対処法のひとつになります。

賃貸料の引き下げがどうしてもできない場合、契約更新時の更新料をなくしたり、更新期間を1年間先送りすることができれば、経費削減になります。 

逆に大家サイドは、賃貸料を上げる目的で、更新期間を3年から2年に短縮して、実質的な賃貸料値上げをはかる例も多いです。

また、大家によっては預かっている敷金や保証金などを、毎年5%ずつ償却する、契約満了のときには50%償却するとといったような、借主に損な条件をつけていることがあります。

こういった勝手な条件は、作り変える必要があります。契約条件をまるごと再確認していこうということです。

大家が絶対に賃貸料値下げに応じないときは、更新料は廃止するとか、それもダメなら更新期間を延長するとか、その他の借主が損になる条件を変更・修正することも意識しましょう。

それが五分五分の賃貸借関係ではないでしょうか。