交渉の攻略法には「短期間減額」「契約期間の延長」という対応策もあります。
その他にも、賃料の支払条件を変更することができます。
それぞれの対応策について説明します。
短期間減額
すなわち、「減額期間は1年だけにしましょう」というような提案です。
1年後に景気動向を検討して、また増減修正の話し合いを行いましょうということです。
いきなり、今後はずっと3割引でお願いしますと請求しても難しい場合もあります。
これは大変有効な提案です。
たとえば、ある弁護士は、交渉の早いうちの決着を目指して貸主と借主両者に「1年間だけ減額してみましょう」と提案しました。
多忙なのでいつまでもかかわっていられない事情もありましたが、この提案を貸主は抵抗感なく受け入れました。
その後の1年間、貸主はいままで以上に経済の動きを注視するでしょう。
1年後にはいまより理解度が進み、同じ土俵の上で改定協議ができますから、よりスムーズに事が運びます。 中には、非現実的な例もあります。
「1年後に元の賃料に戻す」と借主が苦し紛れに約束することです。その場逃れの誠意のない「だまし」に近い約束です。
難しいと思われる約束は、信頼関係を壊すことになります。
契約期間の延長
関東地方のある企業が、「引き下げに応じてもらう代わりに、契約期間を引き延ばします。
まだまだ借り続けますよ」と提案したことがあります。すると、貸主はホッとして引き下げに応じたというケースがありました。
この場合、通常の賃貸借契約とは違う、「定期借家契約」の予約契約(3年)をしました。
定期借家は、一定期間が満了したら更新制度は適用されず終わりです。「法定更新」はありません。
今では、契約の継続と安定収入の確保を望んでいる大家が増えているので、この提案もかなり効果があります。
大家にとっては、長期間賃貸借関係を結んできた借主に貸すほうが、信頼関係ができていますから安全で楽なのです。
また、「賃貸料を下げますから、これから先も借り続けてください」という賃貸料引き下げに対しての条件として、貸主からの打診、申し入れが増えています。
支払条件の変更
月々の賃貸料の「前払い」を「後払い(月末払い)」に変更するということです。
ほとんどの賃貸料は月の前払いが条件となっています。
経済成長が続いていた頃は借主にも支払能力があったので、前払いが慣習化し常識化しました。
賃貸借契約では、賃料を担保する「敷金」や「保証金」が預託されます。
借主がそういう資金を渡しているのに、その上先払いというのは貸主に有利すぎる条件です。
後払いへの条件変更は、無理のない当たり前の要求だと思います。
ある美容院のオーナーが、月15万円の前払い賃貸料を月末払いに変更した例がありました。
大家には100万円の敷金を預けていたので、揉め事もなく実現できました。
オーナーは浮いた15万円をお客様に還元しました。例年の年末よりは、お金をかけてプレゼントを用意したのです。
このサービスがうわさとなり、ロコミで地域に広がり、翌年から美容院の顧客は一層増加しました。
これが「チェーン店」のケースだと、さきの「チェーン店」のように、月末払いへの変更は一時的ですが、大きな金額が浮いてくるのです。
1億あるいは10億、100億単位となります。
この提案は、値下げがどうしてもできないとか、値下げ額が少ないというようなケースに、プラスアルファの材料として試みることをオススメします。